なぜオランダでは人差し指で手を挙げるのか?

2010年オランダに転勤となり、アムステルダムの隣町、アムステルフェーン(Amstelveen)に住み始めました。日本と異なることはたくさんありましたが、一番驚いたことはこれ。オランダでは手を挙げるときは人差し指で挙げること、ということでした。






学校で手を挙げるとき、バスを止めるとき、誰かに声をかけるとき、オランダでは、日本のようにパーの状態で手を挙げてはいけません。人差し指で「1」の状態で手を挙げます。

理由は第二次世界大戦の時、オランダはドイツに占領されたからです。当時のオランダ政府はナチスドイツに抵抗して無駄に犠牲者を増やすことを避け、戦わずに無条件降伏し、ドイツに占領されました。ユダヤ人のアンネ・フランクはアムステルダムで隠れて暮らしていましたがナチスに見つかり収容所に送られました。オランダ人たちはナチスからユダヤ人たちを守ろうとしましたが多くのユダヤ人は見つかり収容所に送られました。オランダがドイツに占領されたというのはつらい経験で、憎いナチス、ヒトラーに関係することはしたくないため、手を挙げるときは人差し指で挙げるのです。


オランダの会社で、同僚のオランダ人たちと話すと、基本的には今でもドイツ人は嫌い、ということでした。(ドイツ人が好きなオランダ人もいますよ!)
オランダ人たちに「日本は他国に占領されたことが一度もない世界でも稀な国なのでわからないと思うが、占領されて植民地になるということはつらいことだ。忘れることはできない」ということでした。
ここで2つのことを思い知らされました。1つは彼らが言うように地球上で他国に占領されたことがない国というのは非常にまれで日本はそのうちの1つであること。もう1つは、他国に占領されるというのは本当につらいこと、その時に生きていなくても、未来に渡り耐えがたいということです。普段は偏見や差別をしないオランダ人がこれほど、当時のドイツが嫌だったこと、今でもドイツが好きではないということを知り、中国、韓国などの国々も日本に対していい感情を持てないのは仕方がないことだなあと思い知りました。

一方ドイツでも、ナチスを連想させないように、今でも細心の注意を払っています。
以下は2016年伊勢志摩で行われたG8サミットの集合写真です。ドイツ首相メルケルさん以外はみな手を挙げています。メルケルさんだけ手を挙げていません。たまたまでしょうか?ちょっと不自然ですね。

別の写真でもメルケルさんだけ手を挙げていません。これは偶然ではなく意識して手を挙げていないのでしょう。ドイツの政治家などは公の場では手を挙げないようにしているようです。理由は上記と同じで、ヒトラー、ナチス崇拝と誤解されないようにするため。もしメルケルさんが手を挙げている写真が別の意味で使われてしまうと問題になるからです。戦後70年以上たってもまだこのように気を付けているわけです。

というわけで私はオランダ駐在の6年間、必ず人差し指で手を挙げていました。オランダ人が不快に思わないように。日本に帰国して数年たっていますが今でも5本の指で手を挙げることに抵抗があります。。。

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